赤みを帯びた鮮やかな紫は人工の色にはない上品さや優しさをもっています。クレオパトラやシーザーも好んで用いたと伝えられます。紀元前1600年ころ、古代フェニキア人によって始められたとされます。地中海で採れる巻貝(シリアツブリ)の分泌液から抽出した紫の染料を用い、エジプト、中近東、ヨーロッパなどで高貴な色として広がりました。ローマ帝国の滅亡とともに消え、長い間“幻の紫”と言われていましたが、貝紫に魅せられた染織の研究家たちが貝紫を現代によみがえらせ、きものや帯の染めに活用されています。1グラムの染料を得るのに2千個ほどの貝を必要とする根気のいる作業がともないます。色の調整やにおいの消臭などにも工夫が必要で、それだけに希少性が高いといえます。